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色収差(注釈6)
実際の写真でこの色収差の効果がどのように見えるかは被写体や撮影条件によって色々で、多くの場合、見た目にはほとんど色収差を感じられない写真が撮れます。しかし、このような場合にも、写真をRGBチャンネルに分解してみると、実際に焦点が合っているのは設計波長550 nmを中心に含むG(緑)チャンネルであることがわかります。実際的なゾーンプレートでは、400 nmから700 nmまでの可視光全域の光に対して同時に焦点を合わせることが出来ませんからR(赤)チャンネルとB(青)チャンネルの像はぼけてしまいます。しかし、Gチャンネルの像が形をはっきりと表現していれば、多くの場合、色はRGBを混ぜ合わせて自然な画像を作り出すことが可能であるようです。しかし、被写体からの光線としては必ずしも波長550 nmの光線が最も強い訳ではありませんから、Gチャンネルの光が他のチャンネルに比べて弱い場合には固定焦点では本質的に不鮮明な写真になってしまうことはやむを得ません。このため、ゾーンプレート写真は被写体の状況によって大幅に出来上がりが異なってしまいます。被写体として得意な分野があるのです。このような効果を減らすために撮影に当たっては像距離を調整する必要があります。このため、ゾーンプレートはF値が大きくて、普通なら、パンフォーカスと考えられるのに撮影に当たってピント合わせが必要なのです。
図1〜図3の写真は、中心的な色が異なる3種類の被写体を撮影したゾーンプレート写真について、それぞれの3つのチャンネルの画像がどのような鮮明さで表されているかを示したものです。図1、図2,図3の被写体は、それぞれ、赤、緑、青に近い色ですが、明るい太陽光の下で撮影しているので、太陽光の波長分布の値が最大となる550 nm近辺の波長の光が多いことが想像されます。実際、図1〜図3のいずれの写真においても、最もシャープなチャンネルはGチャンネルでこのチャンネルの画像が鮮明に写っています。しかし、図1ではRチャンネルが、また、図3ではBチャンネルが最も鮮明な画像になっています。これは、撮影時に図1の場合には長波長の光にピントが合うように像距離を短くし、図3の場合は短波長の光にピントが合うように像距離が長くなるようにピント合わせをしているためと考えられます。
図1 赤い紫陽花
左上の図はRGB分解前のゾーンプレート写真。R、G、Bの表記のある図は、それぞれ、Rチャンネル、Gチャンネル、Bチャンネルに分解した画像を表しています。全体的に見てRチャンネルの画像が最も鮮明です。カメラ:Olympus E-300, ISO 100, 0.04 sec
図2 ビカクシダの葉の上の緑のアマガエル
左上の図はRGB分解前のゾーンプレート写真。R、G、Bの表記のある図は、それぞれ、Rチャンネル、Gチャンネル、Bチャンネルに分解した画像を表しています。全体的に見てGチャンネルの画像が最も鮮明です。Rチャンネルの画像はこれに次いでシャープです。カメラ:Olympus E-510, ISO 200, 1/30 sec
図3 オオイヌノフグリの青い花のマクロ写真
左上の図はRGB分解前のゾーンプレート写真。R、G、Bの表記のある図は、それぞれ、Rチャンネル、Gチャンネル、Bチャンネルに分解した画像を表しています。全体的に見てGチャンネルの画像が最もシャープですがBチャンネルの画像もこれに劣らずシャープです。ほぼ等倍のマクロ写真です。カメラ:Olympus E-300, ISO 320, 1/160 sec