直交線形ゾーンプレート

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1次元(線形)ゾーンプレート

普通、ゾーンプレートと呼ばれるのは、フレネル・ゾーンプレートとガボール・ゾーンプレートですが、フォトンシーブも全く同じ原理に基づくものであるし、その機能からゾーンプレートと呼ばれることもあります。これらのゾーンプレートは、いずれも、2次元パターンを持つプレートですが、図1のように、1次元的なパターンを持つ1次元(線形)ゾーンプレートを考えることもできます。図1左の1次元ゾーンプレートは縦縞ですから横方向に広がった光を収束させるので焦点面では1本の垂直線上に光が集まります。これに対して図1右の1次元ゾーンプレートは横縞なので焦点面では水平線上に光が集まります。

図1 縦型(左図)及び横型(右図)の1次元ゾーンプレート

直交線形ゾーンプレート

ピンホール写真の項で二段スリット板のページで書いたように、1次元縦スリットと1次元横スリットをぴったり重ね合わせると四角い「ピンホール」ができます(図2)

図2 2段スリット板(左図)によって四角いピンホール(右図)ができる様子
 2段スリット板の間隔をdとする時、d=0とすると四角い穴のピンホール板となる。

同様に、縦型1次元ゾーンプレートと横型1次元ゾーンプレートを重ねると四角いゾーンプレートができる事が推測されます。図3右下は、このようにして作られるゾーンプレートのパターンです。この図の中心を通って横方向にX軸を引き、縦方向にY軸を引きます。この時、X軸およびY軸の上では、それぞれ、垂直面上および水平面上の透明部分を通過した光が焦点で強め合う「建設的干渉」の条件が満たされています。透明ゾーン(例えば、縦縞透明ゾーン)であっても軸(x軸)から離れるに従ってこの「建設的干渉」の条件が満たされなくなって次の不透明ゾーン(横縞不透明ゾーン)に突き当たります。同じことを、不透明ゾーン(例えば、縦縞不透明ゾーン)について考えると、不透明ゾーン上で軸から離れるに従って、軸上では満たされていなかった「建設的干渉」の条件が満たされるようになり、次の不透明ゾーン(横縞不透明ゾーン)に至るとこの「建設的干渉」の条件が完全に満たされるようになります。この位置は4つの透明ブロックに囲まれた不透明ブロックなので、このブロックを透明にするとここを通って焦点に至る光は焦点で他のブロックから来た光とお互いに強め合います。縦横の1次元ゾーンプレートを重ねるだけでは、本来干渉で強め合う光を捨ててしまって無駄にしている訳です。このように修正したパターンの図が図3右上です。このパターンの方が図3右下のパターンよりも透明で「建設的干渉」を起こす部分が多くなりますから明るい像が得られます。実際、ゾーン数が大きくなるにつれて、円形ゾーンからできている普通のフレネル・ゾーンプレートに非常に似たパターンになっていきます。これを、ここでは「直交線型ゾーンプレート」と呼ぶことにします。このパターンを持つゾーンプレートは、L. Koechlin 等により計画が立てられている衛星搭載望遠鏡に採用されています。Koechlin等はこのゾーンプレートを「Orthogonal Fresnel Array(直交フレネル・アレイ)」と呼んでいます。

図3 縦型1次元ゾーンプレートと横型1次元ゾーンプレートをぴったり重ね合わせてできる2次元の直交線形ゾーンプレート
 右下は1次元ゾーンプレートを重ねただけのゾーンプレートで右上はそのゾーンプレートにおいて四つの透明部分に囲まれた不透明部分を透明に変更して得られたゾーンプレートです。その理由は次の通りです。1次元ゾーンプレートにおいて不透明部分を光が通れば焦点で位相が半波長ずれてしまって光の強度が下がってしまうので不透明にしてあります。不透明部分が2つ重なっているということは、半波長+半波長=1波長のズレになるので、ここは光を通すために透明にします。

直交線形ゾーンプレートによる光の収束

他のゾーンプレートの場合と同様に、ゾーンプレートを通った光の分布について計算しました。計算したのは、焦点距離が 100 mm で、 ゾーン数が 19 相当の直交線形ゾーンプレートです。比較の為に、同じ焦点距離,同じゾーン数を持つフレネル・ゾーンプレートについても計算しました。いずれも、平行光線(無限遠にある点光源からの光)がゾーンプレートに垂直に入射した時の計算です。

光軸に沿って光がどのように集まるかを計算したものが図4です。設計通り、z=100 mm の所が焦点になっていて光が集まっていることがわかります。直交直線型ゾーンプレートの場合(緑の実線)、光の強さはフレネル・ゾーンプレートの場合(赤の実線)に比べて半分近くまで減っており、z=33 mm の副焦点は辛うじてわかりますがフレネル・ゾーンプレートとはだいぶ違った分布をしています。一方、焦点面上で点光源の像がどのように広がるかを計算したものが図5です。横軸のメモリでわかるように光軸から 0.1 mm までの範囲を図示してあります。また、直交線形ゾーンプレートは普通のゾーンプレートのように軸対称ではありませんからこれについては、水平方向の分布(緑の実線)と45 度傾いた方向の分布(緑の点線)を示してあります。像の中心部分ではほとんど違いはありませんが像の外側のサイドローブ(波打った部分)にはほとんど光が来ていないことがわかります。しかし、直交直線型ゾーンプレートも普通のフレネル・ゾーンプレートも、ゾーン数が同じである限り、像の幅(分解能に関係)はほとんど同じであることがわかります。

図4 光軸上(z軸上)の光の分布
 緑の実線:直交線形ゾーンプレート、赤の実線:フレネル・ゾーンプレート。

図5 焦点面上の光の分布
 緑の実線:直交線形ゾーンプレート(水平方向)、緑の点線:直交線形ゾーンプレート(45 度方向)、赤の実線:フレネル・ゾーンプレート。

軸対称でない直交線形ゾーンプレートでは、図4、図5からもわかるように焦点面での光の分布が方向によって変わってきます。このことは、下に示した焦点面での2次元分布図を見ると一層はっきりとわかります。下の図6、図7はいずれも、焦点面上で焦点を中心に \(2 mm \times 2 mm\) の領域を表しています。また、像の周りのサイドローブを強調する為に、光の強さを対数表示にしてあります。このために、直交線形ゾーンプレートの場合には四角いサイドローブが、また、フレネル・ゾーンプレートの場合には円形のサイドローブをはっきりと見ることができます。なお、フレネル・ゾーンプレートの図が軸対称になっていないのは計算精度が低い為です。

図6 焦点面上での光の分布(直交線形ゾーンプレート)

図7 焦点面上の光の分布(フレネル・ゾーンプレート)

実際に写真を撮影すると、フレネル・ゾーンプレートでは、小さくて極めて明るい像の周りには同心円状のパターンが映し出されることがありますが、直交線形ゾーンプレートでは同心の正方形パターンが現れることがあります。このような写真の例を図8、図9に示します。強くて小さな光源が含まれていない時にはこのようなことはありませんが、背景光の影響で格子状のパターンが残ることがあります。

図8 輝く錫製ジョッキ(直交線形ゾーンプレートで撮影)

図9 輝く銀の天使と銀の玉(フレネル・ゾーンプレートで撮影)