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マクロ撮影
「マクロ撮影」は、通常、撮像面(センサー面、フィルム面)上での像の大きさが被写体の大きさの(1/2)程度あるいは等倍より大きくなる撮影の事をさします。小さな被写体を大きく写すマクロ撮影ではレンズを被写体になるべく近づけて撮影しますから、マクロ撮影は「接写(close-up)」とほぼ同義に使われています。しかし、正しくは、「接写」はこれより低い倍率の撮影も含みます。レンズを使うカメラでピントを合わせる為には、被写体からレンズまでの距離\(a\)が短くなるにつれてレンズから撮像面までの距離 \(b\)を長くしなければならないので、近くの被写体を撮影する為にはレンズを前に繰り出す必要があります。これはゾーンプレートの場合も同じです(結像の公式、図1)。交換レンズの場合、繰り出す長さには限度がありますから、普通の交換レンズではある一定の距離よりも近いところにある被写体にピントを合わせる事はできません。これを解決して、より高い撮影倍率の写真を得る為には、マクロレンズを使う等して撮影を行います。
図1 結像の公式
被写体までの距離 a、撮像面までの距離b、および焦点距離fの関係を表します。
倍率
撮影された像の倍率(横倍率: m)は、像の大きさ、被写体の大きさを、それぞれ、B、Aとして、m=B/A と表されますが、1つの薄いレンズ(ピンホール、ゾーンプレート)については、図2に示すように、倍率mは、b/a であると考える事ができます。したがって、被写体からレンズまでの距離 \(a\) を短くすれば、レンズから像までの距離 \(b\) は長くなり、倍率 \(m\)は大きくなります。
図2 ゾーンプレート写真の像の倍率
ピンホールによるマクロ撮影
ピンホールカメラで撮影する時、撮像面に投影される点光源の像の大きさは針穴の直径よりも大きくなります。高い倍率を達成するために点光源に近づけば、この点光源の像はますます大きくなるので分解能はそれに応じて悪くなり、高い倍率のマクロ撮影は不可能ではありませんが極めて難しそうです(図3、図4)。
図3 撮像面における光の強度分布の倍率依存性
焦点距離 \( f=50 mm\)、ゾーン数 \(N=29\) のガボール・ゾーンプレートで、倍率 m=2倍(赤)、1倍(緑)、 0.5倍(青)、 0.11倍(マゼンタ)になるような \(a、 b\) を採用したときの撮像面上の光の分布を表しています。
図4 分解能の倍率依存性
ゾーンプレート(赤:\(f=50 mm\)、ゾーン数:\(N=29\))とピンホール(青:ピンホール径\(d\)がゾーンプレートの中心円と同じ大きさの時、緑:ピンホールから像面までの距離\(b\)を一定にした時)の分解能の倍率(\(m\))依存性を表しています。なお、ここでは、点光源の像の半径を分解能\(e\)と定義してあります。
ゾーンプレートによるマクロ撮影
と表せますから、倍率\(m\)に対する\(a/f\)と\(b/f\)との関係(左側3列)を求めておけば、これを\(f\) 倍する事でaとb が容易に求まります。このようにして求めた aとbを用いて、被写体が点光源であるときの撮像面上の光の分布を求めたものが上図の左図です。倍率 \(m\) が大きいほど(被写体までの距離\(a\)が小さく像までの距離 \(b\)が大きいほど)、分解能が悪くなりピーク光量も小さくなって撮影が難しくなる事が分かります。この状況をまとめたものが上図の右図です。比較のために、ピンホールを使った場合の分解能も示してあります。ピンホールでは幾何学的分解能