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「ゾーンプレート写真研究室」で説明してあるように、フォトンシーブはフレネル・ゾーンプレートの透明ゾーンをピンホールの集まりで置き換えたものと考えられます。光子(photon)のための篩(sieve)みたいなのでフォトンシーブ(photon sieve)と名前がつけられました。フォトンシーブを作成する時のパラメータ(穴の数や穴の大きさ、穴の配置等)の選択の自由度はとても大きなものです。一部分はシミュレーションを行う事等で最適な値を選ぶ事ができますが,確実なルールはありません。ここではまずゾーンプレート写真の経験等から直感的にパラメータを選んで、フォトンシーブではいったいどんな写真が撮れるのかを試してみました。下の写真は、波長550 nm、焦点距離 50 mm 、ゾーン数19および29 のフレネル・ゾーンプレートに対応するフォトンシーブによるものです。穴の直径は、中心の穴を除いて、対応するフレネル・ゾーンプレートのゾーン幅の1.5倍になるようにしてあります。したがって、フレネル・ゾーンプレートの不透明ゾーンの一部は透明になり、透明ゾーンの一部は不透明になります。周方向の穴の分布等についてはやや複雑になるので、別の機会に記述することにします。
これらの写真を撮影した時に、次のような事がわかりました。まず、被写体に当たっている光が強い事が必要です。これは他のゾーンプレートの撮影でも経験した事ですが、目的とする被写体と背景の明るさの違いが大きいほど明瞭な写真が撮影可能です。この撮影の際に使ったフォトンシーブとこれらに対応するゾーンプレートとについてコンピュータシミュレーションで点光源の像の大きさ(ボケ、分解能の程度)を計算したところ、その違いはそれほど大きなものではありませんでした。ところが、実際に写真を撮ってみるとフォトンシーブによる写真はゾーンプレートによる写真と比べてかなりぼけた写真になってしまいました。このように、実際の撮影結果とは理論的な予測とは、今のところ、矛盾するように思われますが、その理由はよくわかりません。一つ考えられることは、フォトンシーブ作成に使ったミニコピーフィルムの解像度が最良で0.006 – 0.008 mm 程度であるのに対して最小ピンホールの半径が0.03 mm程度であるために外縁部のピンホールが良く効いていないか、あるいは、逆に悪い影響を与えているためではないかと想像されます。