ゾーンプレート参考資料


◇ゾーンプレートの基本的な原理自体は、19世紀初頭にフレネル(Augustin Jean Fresnel:1788-1827)によって見いだされた重要な光学概念である回折理論に基づくものですから、多くの光学の教科書に書いてあります。なお、ゾーンプレートは、日本語で「輪帯板」と訳されていますが、今では、原語のまま「ゾーンプレート」と呼ぶことの方が多く、ここで上げる日本語の参考資料でも最近のものは「ゾーンプレート」と成っているのが普通です。

ピンホール写真に比べると、ゾーンプレート写真はまだあまり「写真家」(「アマチュア写真家」および「プロ写真家」、写真を撮る人)に興味を持たれていないようです。特に、ゾーンプレートについて書かれた「写真家向け」の日本語の書籍は、私の調べた限り、今まで出版されていないと考えられます。範囲を英語の書籍にまで広げても、写真家向けに書かれた詳しいゾーンプレート写真の書籍は見つける事はできませんでした。ピンホール写真についての本の一部を割いてゾーンプレート写真について書いてある書籍はいくつか見つけることが可能です。例えば、Eric Rennerによる「Pinhole Photography」にはゾーンプレートについての1章が設けられています。また、John Neel の「Rethinking Digital Photography」にも同程度の記述があります。しかし、いずれも記述量も少ないですし、ゾーンプレートについて詳しい説明があるわけではありません。電子書籍まで範囲を広げると、いくつかのゾーンプレート写真集が見つかる他、私の著した「ゾーンプレート写真徹底ガイド」他5冊のゾーンプレート写真解説書があります。また、インターネット上には、ゾーンプレートについてのかなり多くの英語のウエブサイトがあって、最近は、ゾーンプレートに関係ある日本語のウエブサイトもかなり増えてきたように思われます。ただし、これらは、キーワード「ゾーンプレート(zone plate)」で検索すれば簡単に見つかるので省略します。

ゾーンプレート/レンズレス写真(論文等)
*Lord Rayleigh, research notebook entry on 11 April 1871.
*J.R. Sorét, Ueber die durch Kreisgitter erreigten Diffractionsphaenomane, J.C. Poggendorff’s Annalen der Physik und Chemie, Leipzig Vol.156 (1875) pp.99 – 113.
*Robert William Wood, Phase-Reversal Zone-Plates, and Diffraction-Telescope, London, Edinburgh and Dublin Philosophical Magazine and Journal of Science, Ser.5 Vol.45 No.277 (1898) pp.511 – 522.
*Robert William Wood, Zone-Plate Photography, The Photographic Journal (May 31, 1900, Vol.XXIV no.9, pp.248 – 263).
*Arnold Roy Shulman, Optical Data Processing (John Wiley & Sons Inc., N.Y., 1970).
*L. Kipp, et al., Sharper images by focusing soft X-rays with photon sieves, Nature Vol.414 (8 Nov 2001) pp.184 – 188.

ゾーンプレート/レンズレス写真(書籍)
*Eric Renner, Pinhole Photography, Third Edition (Focal Press/Elsevier, Burlington, 2004).
*John Neel, Rethinking Digital Photography (PIXIQ, N.Y., 2011).
*竹田辰興、ゾーンプレート写真徹底ガイド(電子書籍:Amazon Kindle, 2014 ).
*竹田辰興、光の環で撮るレンズレス写真 石の巻:ゾーンプレート写真を始めよう(電子書籍:Amazon Kindle, 2014 ).
*竹田辰興、光の環で撮るレンズレス写真 鳥の巻:ゾーンプレート写真を楽しもう(電子書籍:Amazon Kindle, 2014 ).
*竹田辰興、光の環で撮るレンズレス写真 花の巻:ゾーンプレート写真を究めよう(電子書籍:Amazon Kindle, 2015 ).
*竹田辰興、やわらかな光と影:絵のようなゾーンプレート写真(電子書籍:Amazon Kindle, 2015;Amazon POD, 2019 ).
*竹田辰興、デジタル時代のゾーンプレート写真(電子書籍:Amazon Kindle, 2018 ).

◇ゾーンプレートの応用分野は色々ありますが、天体観測への応用は、特に、可視光によるゾーンプレート写真とも直接関係があるのでここにまとめておきます。清水一郎他による「太陽黒点の観測」には実際にゾーンプレートを用いて撮影した太陽黒点の写真が掲載されています。

天体観測への応用
*Laurent Koechlin, Jean-Pierre Rivet, Truswin Raksasataya, Paul Deba, Denis Serre, The Fresnel Imager for exoplanet study, The pathway to Habitable Planets, Barcelona, September 17, 2009.
*Laurent Koechlin, Jean-Pierre Rivet, Paul Deba, Denis Serre, Truswin Raksasataya,René Gili, Jules David, First high dynamic range and high resolution images of the sky obtained with a diffractive Fresnel array relescope, Exp Astron (2012) 33, 129-140.
*清水一郎、小野実、小山ひさ子、<天体観測シリーズ(8)>太陽黒点の観測(恒星社厚生閣、東京、1969).

◇ゾーンプレートの理論について詳しく理解したい場合は光学の専門書が色々ありますが、比較的読みやすいものに鶴田匡夫による続・光の鉛筆(これは同著者の「光の鉛筆シリーズ」の第2巻に当たるものです)があります。この書籍はエッセイ風の構成になっていますが、書かれている内容は高度でありかなり専門的です。堀健夫、堀淳一による「光学Ⅰ、Ⅱ」は全巻ほぼ光の干渉と回折についてのみ記述してありますが、ゾーンプレートについても多くのページを割いて詳しく説明してあります(第Ⅱ巻)。1967年発行の古い本なので、残念ながら絶版になっていて入手は困難ですが、大学図書館などで見ることが出来ますし、古書店で見つけ出すことも可能です。最近、光学関係書籍が多数出版されていますが、これらの中にもゾーンプレートについてある程度詳しく説明してあるものもあります。しかし、上にも書いた通り、これらの本の中に写真撮影に直接役に立つ知識は見つけるのが困難です。これらのうち、いくつかを例としてあげておきますが、他にも多数ある事に注意してください。

光学理論
*堀健夫、堀淳一、物理学大系・基礎物理編 光学Ⅰ、Ⅱ(みすず書房、東京、1967).
*鶴田匡夫、続・光の鉛筆(新技術コミュニケーションズ、東京、1988).
*村田和美、光学(サイエンス社、東京、1979).
*山崎正之、若木守明、陳軍、波動光学入門(実教出版株式会社、東京、2004).
*會田軍太夫、横田英嗣、山崎正之、光学機器入門(東海大学出版会、東京、1983).
*ユージーン・ヘクト、光学(II)波動光学(丸善、東京、2004);Eugene Hecht, Optics, International edition (Pearson 2003).
*ジョセフ・W・グッドマン著、尾崎義治、朝倉利光訳、フーリエ光学第3版(森北出版、東京、2012);Joseph W. Goodman, Introduction to FourierOptics, Third Edition (Roberts & Co. Publishing, 2005).
*Miles V. Klein, Optics, A Wiley International Edition (A Wiley & Sons, Inc., New York, 1970).
*Robert William Wood, Physical Optics, Third Edition (Optical Society of America, Washington, D.C., reprinted 1988).

◇ゾーンプレートは、「回折光学素子」の一つとして色々な応用分野が開けてきているので、写真家向けではない書籍を探すならばゾーンプレートに関係する「回折光学素子」の専門書をかなり見つけることができます。この本の内容はこれらの専門書や論文の内容と直接関係する訳ではありませんが、参考のため、その一部を下に記しておきます。また、ゾーンプレートについての研究論文ならば理工学のいろいろな分野で多数見つける事ができますが、必ずしも「写真家」の行う写真撮影にすぐ使えるような知識が書かれている訳ではありません。

回折光学素子
*応用物理学会 日本光学会 光設計研究グループ監修、増補改訂版回折光学素子入門(オプトロニクス社、東京、2006).
*B. Kress P. Meyrueis, Digital Diffractive Optics (John Wiley & Sons Ltd.,West Sussex, England, 2000); 日本語訳:小舘香椎子監訳、デジタル回折光学(丸善、東京、2005).

位相型ゾーンプレート
*L.B. Lesem, P.M. Hirsch, J.A. Jordan, The kinoform: a new wavefront reconstruction device, IBM Journal of Research and Development 13(1969) pp.150-155.
*A.I. Tudorovski, An Objective with a Phase Plate, Opt. Spectrosc. 6 (1959) p.161.
*Kenro Miyamoto, The Phase Fresnel Lens,J. Opt. Soc. Am. 51 (1961) p.17. 宮本健郎、位相フレネルレンズ、応用物理 29 (1960) pp.158-161).

画像解析・処理
*Wilhelm Burger, Mark James Burge, Digital Image Processing (Springer Science+Buisiness Media LLC, N.Y.,2008).
*Steven L. Tanimoto, An Interdisciplinary Introduction to Image Processing (The MIT Press, Cambridge, 2012).

◇ゾーンプレート写真には直接関係ありませんが、ゾーンプレート写真の研究に大きな貢献をした光学研究者であるR.W. Wood の伝記です。Woodはゾーンプレート写真ばかりでなく、赤外線写真、紫外線写真についても大きな貢献をしており、それぞれ、Wood効果(赤外線写真で木の葉が白く輝いて写る効果)、Woodガラス(紫外線透過フィルター)に名を残しており、本ホームページ全体のテーマとも深い関係があります。

その他
*William Seabrook, Doctor Wood -Modern Wizard of the Laboratory- (Harcourt, Brace and Company, N.Y., 1941).