撮影と画像処理_8:副焦点


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副焦点

光の干渉・回折現象を使っているゾーンプレートの特徴の一つは、屈折現象を使っているレンズと異なり、多数の焦点を持っている事です(注釈_7)。光の波長 \(\lambda\) と焦点距離 \(f\) を指定して作ったゾーンプレートは、主焦点(焦点距離:\(f_\pm = \pm f\))の他に無限に多くの副焦点(焦点距離:\(f_{\pm 3} = \pm f/3\)、 \(f_{\pm 5} = \pm f/5\)、….\(f_{\pm (2N+1)} = \pm f/(2N+1)\),…\))を持っています。ここで、プラスは光源と反対側にできる焦点で、凸レンズの焦点に対応し、マイナスは光源の側にできる焦点で、凹レンズの焦点に対応しています。一つのゾーンプレートは、凸レンズの働きも凹レンズの働きもするのです!上の式のように副焦点の焦点距離は主焦点の焦点距離を奇数で割った値になっています。なお、この副焦点があるのはフレネル・ゾーンプレートであって、ガボール・ゾーンプレートには副焦点は存在しません。また、統一的に表す為に、直進する透過光(非回折光、0次回折光)は無限遠に焦点を結んでいると考えられるのでこれに対する焦点を \(f_0 = \infty\)と表します。
 

図1は、波長、焦点距離、ゾーン数を550 nm、100 mm、15 として作ったゾーンプレートに平行光線を入射したときに光軸上のどの位置(横軸)に光が集まるかを計算した結果の図です。緑色がフレネル・ゾーンプレートを、赤がガボール・ゾーンプレートを表しています。何れのゾーンプレートでも、設計通り、100 mmの位置の主焦点に光が集まっていますが、フレネル・ゾーンプレートでは、この他に、33 mm および 20 mm の位置にも光が集まっています。これらの位置は、主焦点距離 100 mm 1/3 および 1/5 の副焦点に相当します。1/7, 1/9,…の副焦点も存在しますが、これらはこのグラフの外になるので描かれていません。ガボール・ゾーンプレートの場合はこれらの点に光が集まっていない事がわかります。

図1 光軸上の光の分布
 フレネル・ゾーンプレート(緑)とガボール・ゾーンプレート(赤)の光軸上の光の分布を示しています。いずれのゾーンプレートも、波長 550 nm に対して、焦点距離は 100 mm でゾーン数は 15 です。3次の副焦点(焦点距離 = 100/33 mm)はフレネル・ゾーンプレートにはありますが、ガボール・ゾーンプレートには存在しません。

図2はフレネル・ゾーンプレート(焦点距離100 mm、ゾーン数15)の主焦点(実線)および副焦点(破線)の位置にスクリーンを置いてこれらの焦点の近くでの光の集まり方を計算した結果です。この図を見る限り、副焦点にはより狭い範囲に光が集まっているようで、主焦点よりも分解能の高い写真が撮影できるように見えます。しかし、実際には、副焦点を使って写真を撮影するのは容易ではありません。詳しい事は注釈_7で説明しますが、簡単に言えば、副焦点に集まる光の総量が急激に減少する事と背景光の割合が急激に増加する事が原因です。

図2 焦点面上の光の分布
 フレネル・ゾーンプレートの主焦点面(z=100 mm)上の光の分布(実線)と副焦点面(z=33.3 mm)上の光の分布(破線)を著しています。

副焦点を使った写真撮影

上に書いたように、副焦点を使った写真撮影は必ずしも容易ではありません。しかし、注釈_7に記すように、利点と思われる点も存在します。そこで、最も扱いやすい \(f_1 =f/3 \) の副焦点を使って実際に撮影をしてみました。

図3焦点距離300 mm、ゾーン数65 のゾーンプレートの副焦点(焦点距離:100 mm)を使って撮影したノウゼンカズラのゾープレート写真で、上が主焦点(300 mm)、下左が副焦点(300/3 mm = 100 mm)を使って撮影した写真です。比較のために、焦点距離90 mm、ゾーン数19のゾーンプレートの主焦点(焦点距離:90 mm)を使って撮影した写真を下右に示しておきます。焦点距離が300 mmでゾーン数が65のゾーンプレートの副焦点(焦点距離:100 mm)で撮影した写真は、焦点距離100 mm、ゾーン数21程度のゾーンプレートの主焦点で撮影した写真と比較すべきでと思われますが、ここでは焦点距離90 mm、ゾーン数19のゾーンプレートを使って撮影した写真と比較しました。また、焦点距離300 mmで撮影した写真も添えてあります。

図3 主焦点と副焦点による像の比較(ノウゼンカズラ)
(a)は、焦点距離300 mm、ゾーン数65 のゾーンプレートの主焦点(300 mm)、(b)は副焦点(300/3 mm = 100 mm)を使って撮影した写真です。(c)は焦点距離90 mm、ゾーン数19のゾーンプレートの主焦点(焦点距離:90 mm)を使って撮影した写真です。

図4焦点距離150 mm、ゾーン数33 のゾーンプレートの副焦点(焦点距離:50 mm)を使って撮影したエキナセアのゾープレート写真で、上が主焦点(150 mm)、下左が副焦点(150/3 mm = 50 mm)を使って撮影した写真です。比較のために、焦点距離50 mm、ゾーン数29のゾーンプレートの主焦点(焦点距離:50 mm)を使って撮影した写真を下右に示しておきます

図4 主焦点と副焦点による像の比較(エキナセア)
(a)は、焦点距離150 mm、ゾーン数33 のゾーンプレートの主焦点(150 mm)、(b)は副焦点(150/3 mm = 50 mm)を使って撮影した写真です。(c)は焦点距離50 mm、ゾーン数 29のゾーンプレートの主焦点(焦点距離:50 mm)を使って撮影した写真です。

何れの場合も、主焦点を使って撮影した写真の方が鮮明な写真になります。ただ、副焦点を用いて撮影した写真も強い光の部分の輪郭は明瞭に出ています。これらの写真は、いずれも、背景光の影響を減らす処理を行っていますが、副焦点を使った写真では背景光が極端に強いのでこれを十分に取り除くのは困難です。